実母への心からの感謝で

子育てが変わった!

 

娘との関係が改善された体験談

 

谷 直美さん (仮名・岡山県)

 

娘のトラブル

 

 娘が小学校2年生に進級したころのことです。

 

 学校での友達関係が上手くいかない様子で、いつも元気な娘が、学校から帰るなり、「あーあ、またケンカしちゃった。」と疲れた顔で言うのです。

 

 ケンカの理由を聞いてみると、娘がぼそぼそと話してくれました。

 

「隣に座っている子がおしゃべりしているから 注意したんだよ。そしたら、『うるさい!』って言われたん……。」

 

 元来、正義感が強く、誰に対しても物おじせずにはっきりと意見を言うタイプの娘。小さなことにも黙っていられずに、いちいち口出ししてしまうことが原因のようでした。

 

 そんな状態が続いたある日、「あなたが口うるさく言いすぎるから、ケンカになるん じゃないの。」と私が言うと――。

 

 「ママは先生と同じことしか言わん!」

 

娘は、プイッと後ろを向いて私から離れて行ってしまいました。

 

 (そうよね。親の私がこれじゃ、娘のすがるところがないじゃないの。)

 

娘がせっかく悩みを話してくれているのに、頭ごなしに言い放っている私……。娘と言い合いになるたびに後悔するのですが、私は、なかなか娘の気持ちを受け止めてあげることができないまま、時間だけが過ぎていきました。

 

愛されていた実感

 

 年が明けて、なんとか落ち着いてきた娘とは反対に、私は「もっとしっかりと自分の心を見つめなればいけない。」と、強く思うようになっていました。私は、娘とのことだけではなく、自分自身の人間関係でも悩みを抱えていたのです。

 

 その後、幸福の科学の精舎講師が勧めてくれた「母への反省的瞑想」をしてみることにしました。それからは、講師から教えて頂いたように、時間をかけて毎日一つひとつ、母のことを思い返していきました。

 

 私の母は約10年前から精神的に不安定でウツ気味の状態が続き、5年程前に認知症と診断されています。私は、母が精神的に病んでいくなかで、初めての子どもを出産。新米ママが一番母を必要とするときに、逆に母を支えなければならない立場になっていました。頭では、「病気なんだから仕方ない。」とわかっていても、同世代のママたちが 実家で楽しく過ごし、子どもの面倒を見てもらっている話を聞くと、うらやましくて仕方なかった のです。そんな思いが、講師に言った母への不満になったのだと気づきました。母への反省を通して初めて、ずっと押し込めていた自分の心と向き合うことができたのです。

 

 ――母と一緒に台所に立つ小学生の私。「薫は飾り付けが上手だからお願いね。」「洗い物も安心してまかせられるわ。」と、笑顔の母。

 

 回想の中の母は、私を信頼し、ちゃんとほめてくれていました。

 

 母との楽しい過去を思い出すと、とても幸せな気持ちになれました。心が満たされて、感謝の思いが膨らんでいくのを感じます。

 

 (母は私を心から愛してくれていた――。そんな母を責めていたなんて……。)

 

 ポロポロ、ポロポロと涙がこぼれてきました。

まるで、何かが吹っ切れたように、それから幾日も、母に思いを向けるたびに涙がこみ上げてきました。私は、母との幸福な時間に浸るのが楽しく、毎日が幸せの発見でした。そして、その幸福感は、ストレートに私の子育てにつながっていったのです。

 

 以前は、「今日は優しく話しかけよう。」と娘を待ち構えていながら一人で空回りしてしまったり、逆に「何なまいきなこと言ってるのよ!」と、声を荒げてしまったり……。そうかと思うと「さっきはごめんね。イライラしていて。」と慌てて声をかけるのですが、娘からは「もう遅いよ!」と言い返される。そんなことが幾度もありました。

 

 自分が、「……ねばならない」と考えた上ですることはなかなか娘に通じなかったのです。でも、母への反省が深まるごとに、理解してもらえない傷ついた娘の心が伝わってくるようになりました。娘とすれ違いが多かったのは、「お願いだからトラブルメーカーにならないでほしい」という思いや、「嫌な話は聞きたくない」という気持ちが原因だったと気づきました。

 

 そして、こうしなければいけないとがんばっている時とは全く違う時間を過ごせるように変わっていったのです。

 

 娘は、以前よりも素直に気持ちを表に出すようになり、一緒にお人形の髪を結ってあげると、とても嬉しそうに「またやろうね。」と抱きついてきます。これまでは、何か注意しても必ず言い返してきて折れなかった娘が、私の話をちゃんと聞いてくれるように変わってきたのです。

 

 

原点は感謝の思い

 

 同じ年の5月、認知症の母に、家族で久しぶりに会いに行きました。

母は、私の顔を見たとたん、目にいっぱい涙をためて泣き始めたのです。遠くにいても、毎日母に思いを向けていたことが通じていたのでしょうか。

 

 気がつくと、目の前の母を抱きしめていた私――。これまでの求めるばかりの思いは消えて、心の中は(ありがとう。)の思いだけでした。

 

 母に対する反省によって実感できた、愛されているという幸福感、そして感謝の思いは、わが子への愛に確かにつながっています。