転校先で不登校に――

苦しみを乗り越え、優しく、

強くなった息子。

 

環境の変化による大変さを、家族で力を合わせて乗り越え、不登校を克服した体験談です。

 

藤橋 麻里さん(仮名・香川県) 健太くん(仮名・小5)

 



 

 

転校友だちとさよなら

息子の健太が転校前に通っていた学校は、校則もゆるやかで、制服もなく、たいへん自由な学校でした。息子は、こうした環境の中でのびのびと明るく育ちました。

 

友だちも多く、何かと頼りにされる性格。4年生で野球部の副キャプテンにも選ばれました。ところがその年の秋、主人の仕事の都合で、わが家は、広島県に引っ越すことになったのです。

 

さっそく、息子に転校の話をすると、私の心配をよそに、「転校って面白そー! ぼく、ぜんぜん平気だよ。」と、持ち前の明るさと好奇心からか、笑って応えてくれました。

 

その後、クラスのみんなと野球部の仲間たちから、それぞれ盛大なお別れ会をしてもらいました。さすがに、この時は、友だちとのお別れが悲しかったようで、涙を浮かべていました。

 

 

 

こはイ!」

新しい学校での生活がスタートし、一週間ほど過ぎたある夜のこと。息子が突然しくしくと泣き始めたのです。理由を聞いても、「ここはイヤ!」と言うばかり。次の日も、また次の日も、夜になると泣き出します。私は、その夜、泣きやまない息子をひざに抱き、少しずつ学校のことを聞き出しました。すると、ぽつりぽつりと胸の内を話し始めたのです。

 

 

 

きととまどいの

息子は、初めから新しい学校の習慣にとまどいを感じていたようです。まず転校初日に、生徒全員が黒い制服を着ている光景に驚いたそうです。集団登校にもなじめないと言います。

 

授業の進め方も、時間を競って計算ドリルをしたり、連日のように何かの教科でテストがあったりと、前の学校とは全く違います。宿題も、以前の3倍はあります。

 

さらに追い討ちをかけたのが、担任の先生の言動でした。「何でこんなことができないの。あほやなあ」「こんな時期に転校してきて、先生も大変なのよ」 

 

私は、すぐに主人と一緒に学校へ行き、担任の先生と校長先生に、息子から聞いたことを話しました。その上で、違う環境で育った息子を理解して受け入れてほしいと訴えたのです。

 

しかし、私たちの思いは、先生方には届きませんでした。

 

「私たちは健太くんを受け入れようと思っています。ただ、学校の教育方針は変わりませんので、健太くんが慣れるように努力してください」

 

その後、しばらくして、息子はとうとう学校へ行けなくなってしまいました。

 

 

 

お父さんもお母さんも

   健太の味方よ

私は、朝夕に毎日お祈りをしました。

 

(早く元気になって、以前のように笑い声の絶えない健太にもどることができますように…。)

 

ちょうどその頃、親子で幸福の科学の精舎、聖地・四国正心館へ行くツアーがあり、私と息子も参加しました。そこで、私は講師に息子のことを相談したのです。

 

「健太くんにとっては、ご両親だけが頼りです。どこまでもお子さんの味方になって、守ってあげてください」

 

その言葉に、私は親としての覚悟が決まりました。

 

私と主人は、再度校長先生に会いに行く決心をしました。

 

「健太は、慣れない環境と担任の先生の言葉に驚き、傷ついています。どうかそのことを理解してください。私たちは、全力でわが子を守ろうと思っています」

 

すると校長先生の方か「わかりましたでは、明日からしばらく校長室に登校してみません」と提案してくれたのです校長先生は翌日から毎日息子を送り迎えしてくれました。そして校長室でいろいろと話を聞いてくれたそうです。

 

やがて、久しぶりに教室に登校した息子に、担任の先生が「ごめんなさいね。」と、謝ってくれました。

 

その日から、息子は少しずつ元気を取り戻していったのです

 

 

 

新しい担任の先生

 春が来て5年生になると、若い男の先生が、息子の担任になりました。

 

ある日、いじめられている友だちを助けに入った息子は、争いに巻き込まれてしまったことがありました。その時、新しい担任の先生が、子どもたち一人ひとりの話を聞いた上で、決然とこう言ったそうです。

 

「いじめる側が悪い! もうやってはいけないよ」

 

この事件を機に、息子は、先生に強い信頼を寄せるようになりました。

 

それからは、勉強や、クラスの中の手伝いを一生懸命がんばるように変わっていったのです。

 

息子の顔に、笑顔が戻りました。

 

 

やさしくたくましく

息子はすっかり元気になり、放課後になると友だちとよく野球をしています。野球が得意なので、いつもピッチャーで4番です。

 

そして、5年生の2学期、クラスの子たちの推薦で学級委員長に選ばれました。クラスで行った劇では主役にも抜擢されました。

 

大川隆法総裁先生の書籍『仏陀再誕』の中に、「たとえ、努力において苦しみがあったとしても、人生において学んだことは、一つも無駄にならない」ということが書かれています。

 

息子は、前の学校では、人と調和する喜びを学びました。そして新しい学校では、友だちと切磋琢磨しながら勉強する喜びも覚え、量が多いと困っていた宿題も、今では「楽勝になったよ」と言っています。環境の変化にとまどったり、つらいこともあったけれど、親子で、やさしい心と強くたくましい心の両方を学ぶ機会を与えていただけたのだと、今では心から感謝しています。