子どもからのSOSで
ママが大変身!
ある日、突然耳が聞こえなくなってしまった娘。
母親が我が子の異変をきっかけに自己変革したお話です。
田岡未和さん(仮名・北海道)
長女:由香里さん(仮名・10才) 次女:沙希さん(仮名・8才)
姉妹の性格は正反対
長女の由香里と次女の沙希。わが家のふたりの姉妹は、生まれた時から正反対の性格です。
いつもまわりのことを先に考えて、自分のことはがまんするおとなしい由香里。反対に、赤ん坊の頃から、2つ上のお姉ちゃんを押しのけてママのひざを独占する、自己主張の強い沙希。
きょうだい喧嘩はたいてい妹の沙希が仕掛けます。由香里の読んでいる本を取り上げたり、見ているテレビのチャンネルを急に変えたり…。
「やめて」
由香里がひかえめに抗議すると、
「お姉ちゃんのバーカ。どっか行っちゃえ!」
と、激しい言葉をぶつける沙希。
私は、(また……)とため息をつき、沙希の嵐が過ぎ去るのを待ちます。
(沙希はこういう性格だから仕方がない……)
そんなふうに諦めていた私は、大声でひどい言葉を言う沙希をなだめはしても、厳しく注意してやめさせようとはしませんでした。
「ママ、耳が聞こえない……」
夏休み最後の日曜日。家族で映画を観に出かけた帰りのことです。
「ママ、なんだか耳がよく聞こえない」と、由香里が訴えます。
すぐに病院で診てもらいましたが、耳自体も聴力も異常はありません。
(これは心因性のものかもしれない……)
「由香里、何かつらいことがあるの?」そうたずねると、
「沙希のこと」と答えます。
けれど、私にはピンときません。
いくら激しくけんかしても、しょせん姉妹の間のことです。そのために病気になるとは思えません。
結局、原因もわからないまま二カ月が過ぎました。
ある日、ふと「もしかして母親である私に原因があるのではないか」と思い到ったのです。私は、すぐに幸福の科学の精舎に行って瞑想し、静かに自分自身と向き合いました。
母親として足りないもの
(どうすれば由香里の耳は治るでしょうか……)
広い礼拝堂の中で、私は、仏に手を合わせて深く祈りました。その時、ハッと気づいたのです。
(わが家の中で、たった一人不機嫌をまき散らす沙希。沙希の機嫌さえよければわが家は平和。沙希ががまんさえしてくれれば、わが家は万事うまくいく……。
私は、そんなことを考えていたんだ!)
「ごめんなさい! 由香里!」
反省の涙が、後から後からこぼれました。これまで私は、家庭の中で何がやっていいことで、何がやってはいけないことなのかをきちんと子どもに教えてきませんでした。母親としてもっとも大切な役目から逃げていたことにはじめて気づかされました。
「よし、これからは善いことは善い、悪いことは悪いと、シンプルに注意しよう!」
そう決意しました。
ママが大変身!
「うっせーんだよ、バカ!」
沙希の言葉に、私はサッと家事の手を止めます。
「沙希ちゃん、今お姉ちゃんに何を言いましたか」
真剣な顔で沙希の手を取ると、御本尊の前まで連れて行きます。そして、「そんなことを言ってはいけません」ときっぱりと教えます。
突然の私の変化にびっくりしつつも、私のことをなめてかかっている沙希は、「フン!」と言って逃げます。あばれる沙希をはがいじめにして善悪を言い聞かせるのは一苦労で、こちらもクタクタになります。
次の日も次の日も、同じことがくり返されました。
「沙希ちゃん、いらっしゃい!」
「えー、またー」
「そうです。お母さんは、これからはこれでいきます!」
私は、自分を奮い立たせるように、毎日、沙希に宣言しました。ヘトヘトになってこちらが負けそうになると、自分の役目に気づけたあの日、幸福の科学の精舎で引いた『開運一転語』の言葉を思い出します。
「平凡の中にこそ、愛は試される。
持続と忍耐の中にこそ、愛は光る。」
(大川隆法総裁『光ある時を生きよ』より)
(ママがどのくらい真剣にあなたたちのことを愛しているかが、今試されているの。さあ、心して行くわよ!)
子供に信頼されるママに!
嵐のような一週間が過ぎ、やがて、沙希はひどい言葉を言わなくなりました。イライラした様子もなく、ケロリとして明るい感じです。そして、由香里の耳はもと通りになり、私を見つめる由香里の瞳に信頼と安心が感じられるようになりました。
その後、主人と私は「言葉の持つ力」について子供たちに話をしました。「よい言葉はよい未来を創り、悪い言葉は悪い未来を創るのだ」と。
そして私は、親が善いこと、悪いことをちゃんと教え、言葉と態度で信念を貫けば、子供は大きな安心感の中でのびのびと育っていけるのだと学びました。
娘たちが、母親として成長する喜びを教えてくれたのだと感謝しています。