仕事を持つ私が気づいた

子どもの心に寄りそう大切さ

 

仕事と育児の両立に日々奮闘するママが、

子どもへの愛し方を改めた体験です。

 

佐伯 智子さん(仮名・東京都)・優香ちゃん(仮名)

 

 

 

思い浮かぶ長女の姿

 

「ママー、一緒に折り紙してよー。」

 

 仕事から帰る私を待ち構えていたのは、下の子の麻紀(小一)です。私は座る間もなく、夕食の支度を始めようとしますが、麻紀はダダをこね始めます。

 

 不満をストレートに表して、どんどん要求をぶつけて来る麻紀。

 

 (でも、お姉ちゃんはこんなこと一度もなかったわ……)

 

 長女の優香(小五)は、私が「○○してほしいの?」と尋ねても、いつも「いい」と言っていたのです。優香から話しかけてくることも少なく、私もそれで済ませていました。

 

 優香は中学受験を希望していたにも関わらず、成績が伸び悩んでいて、私は「どうしたらいいだろうか」と頭を抱えていました。

 

 「このまま一人で任せてはおけない。かと言ってパパも仕事で忙しいし……。私が責任を持って見てあげられるかしら……」

 

 優香の勉強の様子を振り返って、最初に思い浮かんだのは、机に向かって一人、ポツンと、勉強している姿でした。それなのに、私はいつも忙しくしていて「勉強しなさい」と言うだけ……。一人でがんばっている優香のけなげな姿ばかりが浮かんできます。

 

(小学校入学の頃、環境が変わったせいか元気がなく、ジンマシンまで出ていたのに、私は、学校に行っていれば安心だと気に留めていなかった……。ほんとは助けてほしかったよね……)

 

 幼い優香が、さみしい気持ちを小さな心にそっと押し込めているように思えました。今まで、こんなふうに優香のことを考えたことはありませんでした。もしかしたら私は、大事なことを置き去りにしてきたのかもしれない── 。そんな思いがこみ上げました。

 

 

とことん付き合ってみよう! 

 

 その後、優香のことをじっくり考える時間がとれないまま、あわただしく日々が過ぎていきました。

 

(優香には勉強を見てあげる人が必要だわ)

 

 私は悩んだ末、決心しました。

「とにかく、優香のために時間を作って、二人三脚でやってみよう。今を逃したら、きっと後悔することになる」

 

 私は、彼女が望んでいる中学受験にとことん付き合うことで、優香とふれあえる時間を少しでも持とうと思いました。

 

 早速、その頃抱えていたいくつかの仕事を一本に絞り、時間を作りました。また、勉強を見てあげやすいように優香の部屋を台所の近くに移しました。

 

 私は、優香のやっている練習問題を自分でも実際に解いて、感想を話してみました。

 

「この問題は難しいわね」 

「えっ! ママもやってみたの!?」 

 

 にこにこ顔の優香── 。娘と同じことをして会話を交わしていくなかで、娘の気持ちがちょっとだけ理解できた気がしました。

 

 

心を向けること 

 

こうしたことを続けていくうちに、私たち親子の会話は、自然と勉強以外にも広がるようになりました。

 

 しばらくすると、目に見えて優香が変わってきたのです。 

 

「今日ね、私ね……」

 

 優香が、自分から少しずつ話をしてくるようになり、

 

「ママ、一緒にお風呂に入ろうよ」と素直に甘えてくるようにもなったのです。

 

 特に変わってきたのは、考え方が明るく積極的になったことです。例えば、テストの結果が思わしくない時でも、「私、次はがんばるからね」と前向きな言葉が出てきます。以前よりずっと笑顔も増えました。

 

(優香はこんなことを考えていたんだ。こんなに自分から話したり、笑ったりする子だったんだ)優香の変化を目の当たりにした私は、正直言って驚きました。

 

 

愛を込めるということ 

 

(今まで、娘のこんな姿を見なかったのはなぜかしら……)

 

 私は、母としての自分を振り返ってみました。

 

 長女の優香が生まれて少し経つと、私は仕事に復帰しました。その後、次女を出産してから、再び仕事に戻ったとき、ブランクによる勉強不足を痛感しました。

 

 そのため、「自分の勉強時間を少しでも確保したい」「仕事を続けていきたい」という気持ちが強くなり、いつもあせっていたのです。

 

 日々、やることの優先順位を決め、時間の効率がよいように物事を進めること。それが、私がもっとも重きを置いていたことでした。家事もはかどり、自分では順調なつもりでした。

 

 ところが、私が勉強に付き合い始めてから、優香が明るく積極的に変わっていくのを見て、気がついたのです。私は、母親として愛情を注いでいると思っていたけれど、いつの間にか、子育ても家事もただの“作業”になっていました。

 

「私は手順どおり合理的にこなしているだけ。心が置き去りになっていたんだわ」

 

 掃除、洗濯、片付けなどをする私の後を追いながら、話しかけてくる娘たち ── 

 

「ママ! 私の話、聞いてる!?」 

 

 よく、そう言われました。

 

「忙しいから後でね。」

── とりあえずの返事。結局、それっきりになってしまうこともありました。

 

幸福の科学で「愛」の大切さを学んでいたのに、私は子どもの心に寄りそうことができていませんでした。

 

 私は、子どもたちに心を向けて、しっかり耳を傾けるように心がけました。

 

 そして優香には、本人が「やらなくてもいいよ」と言うことでも、時には手をかしてあげるようにしました。その時の優香のうれしそうな顔を見ると、(今まで遠慮していることも多かったんだなあ)と思います。

 

 子どもたちは、「自分たちのうれしいことやつらいことに何よりも心を向けて共感してもらいたいのだ」と、つくづく分かりました。

 

子育ての充実感を知って 

 

 子育ては、仕事と違ってハッキリとした結果が見えません。でも、仕事の達成感とは違う、魂がうるおうような充実感を得ることができます。私は、その素晴らしさに気づくことができました。忙しさの中にあっても忘れてはいけない大切なことがあることに、改めて気づかせていただいたのです。

 

 受験まであと半年。これから親離れしていく娘との貴重な瞬間として残りの期間を過ごしていきます。

 

 そして、仕事と家庭の両立に努力し、どんな時でも子どもと一緒に歩んでいけるママでありたいと思います。