完璧主義をやめたら、

子どもの長所が

見えるようになった

 

子供の悪いところばかりが目について、

叱ってばかりいたお母さんが

自分の間違いに気付き、

子供への接し方を変えることができた体験談です。

 

古川 三恵子さん(仮名・愛知県) 達也くん(仮名・小4)

 



 

 担任からの指摘

 

私は2人の子どもを育てながら、保育士・学童指導員として働いています。

 

仕事柄、「自分の子どもをきちんと育てなければ」との思いが強く、2人には、幼い頃から挨拶やお礼の言い方、食事のマナーなど、人一倍しつけに心を配ってきました。そのかいあって、周りの方から「お子さんは、礼儀正しくて偉いわね」とほめられることも多く、子育てに関しては自信を感じていたのです。

 

ところが、長男の達也が三年生の夏休み前のことです。保護者会で、担任の先生から注意を受けたのです。

 

「達也くんは、宿題や持ち物の忘れ物が多いので、お家でも気をつけてください」

 

「ええ? うちの達也が?」

 

私は耳を疑いました。

 

私は達也に忘れ物をしない習慣をつけるため、一、二年生の間ずっと、毎日一緒に連絡帳を開いて宿題や持ち物を確認していました。そして、「二年間も教えてきたのだからもう大丈夫」と、三年生から一人でさせ始めたばかりだったのです。

 

 

3つの約束

 

「達也、宿題はやってあるんか?」「うん」

 

「忘れ物はないね?」「うん」

 

そんな達也の返事をうのみにして、すっかり安心していたことが悔やまれました。その日、私は帰宅した達也をつかまえて、すぐに言いました。

 

「連絡帳、持ってきてみぃ」

 

私は、連絡帳を開いてびっくりしました。ほとんど何も書いてありません。その上、教科書やノートは学校に置きっぱなしで、ランドセルの中身が空っぽでした。

 

「ありえん! これでどうやって宿題やるわけ?」

 

私はこのとき、達也に三つのことを約束させました。

 

「『連絡帳を書くこと』『教科書やノートは全部持って帰ること』『宿題があったら夜までに終わらせること』。忘れ物がなくなるように、この三つ、できるようになりなさい!」

 

ぽろぽろ泣きながら黙って聞いている達也を見て、私は、これで良くなるだろうと思いました。

 

 

「どうしてできないの?」

 

ところが、二学期になっても達也の忘れ物は直りませんでした。私は先生にお願いして、達也が連絡帳をきちんと書いているかどうかを確認してもらうようにしました。

 

そのおかげで、三つの約束のうち連絡帳を書くことだけは、できるようになってきました。でも、あとの二つはなかなかできません。

 

保護者会でも、また忘れ物が多いと注意され身の縮む思いがしました。

 

(私だって、忙しい仕事と家事の合間に何度も注意してるのに! これ以上、どうすればいいの?)

 

こんな状態が四年生になっても続き、教育にたずさわる仕事をしてきた私のささやかな自信は粉々に打ち砕かれてしまいました。

 

 

100%できなくちゃ、意味がない

 

 そんなある日、幸福の科学で一緒に仏法真理を学んでいる友人が電話をくれました。私が悩みを打ち明けると、友人はじっと聞いてくれた後に、こう言いました。

 

「三恵子さんは、できないところばかり見ていない? 目標の100%はできなくても、数ページでも進んだら、『これだけはできた』って、自分を認めてあげればいいじゃない」

 

 思いがけない言葉に、私の心のカラがバリンと割れたような気がしました。

 

(本当にそうだ。私はいつも完璧を求めて、100%に届かなければ意味がないと思っていた。その考え方が、自分を苦しめていた……)

 

 私は電話を切ってから、友人の言葉を深く考えてみました。

 

(達也に対しても、同じことしてたんだ!)

 

 私は、達也が三つ全部の約束を守れなければできたとは言えないと思っていました。一つぐらいでほめてしまったら、慢心してそれ以上努力しなくなってしまうと思っていたのです。

 

 でも、「全部できなきゃ認めない」という私の決めつけが達也を苦しめ、かえってやる気を失わせていたのかもしれません。

 

 

厳しかった父とそっくりの私

 

 そしてこのときに、もう一つ気づいたことがありました。

 

私に怒られてシュンとした達也の姿は、父に怒鳴られるたびに身をすくめていた、子ども時代の私にそっくりだったのです。

 

父はとても厳しく、小さなことでもすぐに大声で叱りつける人でした。私は叱られるたびに、やるせない気持ちになり、父への複雑な思いを、ずっと引きずっていました。それなのにいつの間にか、父と同じ子育てをして、自分の子どもにも、かつての自分と同じ辛さを味わせていたのです。

 

(達也、ごめんなさい……)

 

しかし、私を叱った父の思いも、私が達也を思う気持ちと同じ、子どもへの愛情ゆえだったと気付いたのです。

 

(お父さんは私を大事に思ってくれてたんだ。ありがとう)

 

心が温かくなり、長年、父に対して抱いていたわだかまりが解けていくのを感じました。

 

 

努力を認めてほめよう!

 

私はさっそく、自分の行いを改めていきました。できなかったところを責めるのはやめて、約束の一つでもできたら心からほめるようにしました。

 

「連絡帳、ちゃんと書けてえらいね!」

 

私にほめられてニコッと笑う達也を見ると、私も嬉しくなってきます。

 

そして、宿題をやっていないときは、怒らずにきちんとやるよう促しました。

 

「宿題は大事よ。今からやろうね」

 

泣きそうになりながらも、最後までがんばり通した達也に、「ようがんばったな」と声をかけていきました。

 

できない所を指摘ばかりしていたときは、切羽つまった気持ちでイライラしていましたが、接し方を変えると、心が波立たなくなっていきました。

 

次第に、「達也ができるようになるまで根気よく教えていこう」という気持ちに変わっていきました。

 

穏やかな心で接すると、達也の持っている良いところが、大切な個性の輝きだと感じられました。そして、毎日接する子どもたち一人一人の長所が、以前よりたくさん見えるようになりました。

 

今回の体験を通して、自分の心の傾向性が、子育てに大きな影響を与えるのだと分かりました。これからも頑張って子育てをしていきます。