消極的な息子が、

明るく積極的な子に変わった

 

内向的な子どもの性格を変えようと必死だったお母さんが、

長所を伸ばす子育てに目覚めた体験です。

 

秋元博美さん(仮名・神奈川県)・隆くん(仮名)



〝泣いてばかりで消極的〟な長男

 長男の隆は、幼いころから繊細で内向的でした。自分の意見や気持ちを言葉でうまく伝えることができず、泣くことで表現するような子でした。例えば、小一のある日のこと。大好きなプリンが給食に出たので、「最後に食べよう」と思ってとっておいたら、友達にプリンを横取りされて、何も言い返せず、ただメソメソしていたことがありました。

 

 私は、「もっと積極的でたくましくなってほしい」と思い、学校の委員やスポーツ大会の参加を勧めました。しかし、隆は「無理」とか「できない」と言って、しり込みするばかり。何事にも消極的でいつも自信がなさそうなのです。

 

 一方、隆の二歳年下の弟・勇樹は、明るく行動的で何かと目立ち、兄とは対照的なタイプ。

 

 (隆は、どうしてこんなに後ろ向きなのかしら)

 

 私は、いつも隆を弟と比べて責めていたのです。

 

 

コンクールに挑戦

 ある日、学校に行くと、「今度、『自然科学観察コンクール』があります。隆くんもレポートを出してみませんか」と、隆の担任の先生からお話がありました。

 実は、夏休み中、隆はヤゴ(トンボの幼虫)を飼い、一生懸命に世話をしていたのです。先生は、隆からその話を聞いて、コンクールへの応募を勧めてくださったようです。

 

 (でも、隆にはコンクールのレベルが高すぎないかな)

 

 先生に断ろうと思いかけたその時、大川隆法総裁の著書『若き日のエル・カンターレ』にあった「小さな成功も積み重なると一つの自信となる」という言葉を思い出しました。

 

 (そうだ。コンクールに挑戦すること自体を小さな成功だと考えればいいんだ。隆がこれをやりとげたら、自信を持てるようになるかもしれない)

 

 家に戻った私は、学校から帰ってきた隆に、さっそくコンクールの話をしました。

 

 「この小学校開校以来、あなたが初めてこのコンクールに挑戦するのよ」

「僕がやるの!?」

 

 はじめは驚きの声をあげた隆も、私が熱心に勧めるうちにだんだんやる気になり、とうとう決意したのです。

 

「わかった。やってみる」

 

 

小さな成功から自信へ

 レポートの題は、「ヤゴの飼育と羽化の記録」とし、飼っていた時の記憶を親子でたどりながら、写真や絵、文章でまとめることにしました。

 

 しかし、途中で何度も「できない」と泣きべそをかく姿に、私はイライラがつのりました。

 

 そのたびに、(隆が自信を持つことが大事なんだから、叱っちゃいけない。もっと褒めていこう)と思い、見守るように努力を続けました。

 

 気をつけて見ていると、隆はホームビデオで撮っていたヤゴの動作や色、形などをとても細かく観察して絵に描いています。

 

 私が息子の粘り強さに感動し、心から褒めると、隆もニコニコしていました。

 

 それからやる気が出てきて、二週間かけてレポートが完成した時には「やりとげた」という満足感いっぱいの顔をしていました。

結果は、参加賞でしたが、なんと全校朝礼で、校長先生から賞状と記念品を頂くことになったのです。

 

 担任の先生のはからいで、私もその場に居合わせることができました。全校生徒の前で、照れながらも、とても嬉しそうな隆。その姿に、私は胸が熱くなりました。

 

 途中でくじけそうになったけれど、隆は自分に打ち克ち、最後までやりとげました。努力する喜びを学んだことが、息子にとっての成功なのだと思いました。

 

 

隆の輝きを確信して

 その経験が一つの自信になったのでしょう。年明けの書初めコンクールに自分から進んで作品を出したのです。

 さらに、三学期のある夜。ふだんは、学校でのことをあまり話さない隆が、夕食の席で、「今日、パソコンの授業でね……」と話し始めました。

 

 その日の授業は、自分の名前を漢字で打つ練習だったそうです。日ごろからパソコンが好きな隆には朝飯前。クラスメートの中で、「すごい!」と注目を浴びたのでした。

 主人からも「すごいじゃないか」と褒められ、「へへっ」と照れる隆を見て、私はハッとしました。

 

(この子はパソコンが得意なのに、私は今までそれを褒めたことがなかった……)

 

アクティブなことが好きな私には、パソコンや書道などは地味で退屈なものに見えていたのです。

 

(私の勧めたスポーツはあまりやりたがらないから、消極的だと思い込んでいたけれど、積極的に取り組んでいることもあった。私のものの見方が間違っていたのかもしれない。)

 

その後、私は折にふれて、隆の個性について考えていきました。

 

(隆はヤゴのレポートの時のように、好きなことには粘り強く努力していた。それが長所なのに、私は「行動的でたくましい子」という理想像を押しつけて裁いていた)

 

 それと同時に、隆の長所について考えてみました。

 隆は、おやつが出されるといつも、その場にいる弟や友達全員に行き渡るように分けています。

 

(この子は、自分より相手の気持ちを先に考えている。そんな繊細なところが短所に見えていたけれど、見方を変えれば、優しさという長所なんだ)

 

 隆の個性の輝きが見えるようになった時、心配や怒りの心がスーッと消え、ありのままを受け入れることができるようになりました。

それ以来、隆が興味を持っていることを肯定し、励ますようにしました。

 

 しだいに隆は、私も主人も驚くくらいコツコツ努力するようになっていきました。四年生の時は野鳥に興味を持ち、新聞に連載されていた野鳥の記事を、一年間スクラップし続けていました。

 

 自分の気持ちや意見を口に出し、行動できるようになってきたのもこの頃からです。五年生の時は、書初めコンクールで金賞をとり、六年の今は、パソコンクラブの副部長も務めています。

 

 私の思い通りに性格を矯正しようとしていた時には、萎縮する一方だった隆。親として息子の個性を受け入れ、長所を伸ばそうと心がけるようになってから、本来の素晴らしさが現れてきたのです。

 

 これからも、子どもの個性に合わせた子育てを心がけていきます。